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新撰組 禁令隊規
一、士道不覚悟
二、局の脱退を禁ずる
三、個(私)での金策を禁ずる
四、個(私)での訴訟取り扱いを禁ずる
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※俗に言われている「私の闘争不可」は、史実の記録には存在しないのでここでは省きます。また、禁令は2番隊・永倉新八の残した手記にその様な類の決まり事があったという回想があるのみで、正確な禁令文言の有り様を記した隊規書面などは残されていないので「そういう主旨のもの」とご理解ください。
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この禁令隊規は、土方歳三が作ったとも近藤勇が作ったとも言われています。
この規律に反した者には切腹が申しつけられたと言います。つまり「死」という事です。
誰のアイディアだったとしてもこれを決定事項として遂行していたんですから、もの凄い気合の入りようです。
まず、新撰組に一度入ったなら抜ける事が許されなかった訳です。 |
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当時、新撰組は多くの事件を解決する事により正式な国の任命を受け、特別警察部隊としてまとまった姿をしていました。
ですから浪人たちにはカッコよく映っていたようです。
それに加え、志しと十分な技術があれば身分を問わず誰でも入隊できるとあって、拠り所の無い浪人連中はまともなねぐらや日々のメシを求めてわんさか集まって来ました。また、力を誇示して振舞いたいが為に肩書や新撰組所属の旗印を欲しがる半端者・ならず者も多かった事でしょう。
しかし、ズレた気持ちで入隊して「疲れたからイヤだ。」とか「納得いかない。もうついて行けない。」などという理由で、「やっぱり、やーめた!」という事は許さない
という事だったわけです。
そして、一番すごいのが最初の「士道不覚悟」です。
何とも線引きが曖昧な主観によって変化しそうなアイディアですが、つまりは、臆病風ふかして無様な事をさらしたり、武士としての生き方にあるまじき事をしたならば「死んでもらう。」という認識と暗黙の圧力です。
もの凄く厳しいですね。 |
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これだけ厳しくする理由は、格好だけの志や身勝手な理屈と威勢だけで入ってくるようなハンパ者は、W絶対Wに許さないというところにありました。
また、新撰組はどこから集まってくるか分からない烏合の集を一切の身分・履歴を問わず入隊を許可する訳ですから、このくらい厳しくしないとまとめられなかったのもあるでしょう。
身分は会津藩下の立派な公的組織ですから、ゴロツキの私立集団にしたくなかった実情もありました。もしも、そういうのを許してしまったなら、この組織はバラバラになり、甘さが甘さを呼び、格好と私見だけのただの粗暴な仲間達になってしまいます。
厳しい戒律を貫く事が、組織をまとめる唯一の箍(たが)だったのです。
この隊規は幹部・平隊士を問わず、全員に平等に適用されました。
実際に、初代の局長や副長クラスの者も粛清されたり、切腹したりもしています。
一切の例外を認めなかったわけです。
そしてそれが、新撰組を運営していく上で大きな要になりました。 |
ただ唯一、伊東甲子太郎という論客が中途入隊後に参謀という大幹部に優遇され、その座にて発言力を強めます。しかし、そもそもの思想が新撰組の幹部達と異なる伊東は新撰組本体との意見相違・批判から激しく対立し、何人かの同士を引連れて新撰組から出て行こうとします。
しかし、禁令にある様に例え幹部であろうと隊士の局脱退は許されず、すれば切腹ですから、伊東はヘ理屈をこねて「分派」という形を主張します。ゴチャゴチャと面倒な男なので、近藤はじめ新撰組幹部も表向きは分派という形で一時的にそれは許す体裁を取ります。
伊東は「新撰組分派・御陵衛士」と名乗り別部隊を組織しますが、敵方の薩摩藩と通じているとの事から、その後間もなくして伊東は新撰組によって暗殺されます。
また、江戸の頃からの友である重鎮幹部の山南敬助も規律違反の為に死んでいます。
この事に関する詳しい内情を記された物は存在しませんが、証言記録には山南敬助が規律違反(脱退)により切腹になったとだけあり、大きな何かが内部であったのではないかとも考えられます。
京都警護の時代、隊士の半分近くが隊規違反で命を落としていったといいます。
土方歳三が隊の実務や規律を切り盛りし、監察(密偵)を使い、全ての情報を把握し、この厳しい規律の下、一切の例外を認めず冷酷に隊の管理を行っていたと言われています。
これが、皆から "鬼の副長" と呼ばれた大きな理由でもあります。 |
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見解に関する参考史実は、限りなく現存する記録に忠実に従うように努めています。
しかし、当時の証言や言動などに関しては、誰にでも理解でき楽しめるように、わざと難しい説明や固い言い回し、昔の言葉使いや表現などをせずに現代口語に変えて記載してあります。
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